アミオダロン

アミオダロン
IUPAC命名法による物質名
  • (2-{4-[(2-butyl-1-benzofuran-3-yl)carbonyl]-2,6-diiodophenoxy}ethyl)diethylamine
臨床データ
胎児危険度分類
  • US: D
法的規制
  • JP: 処方箋医薬品
  • US: -only
投与経路 経口、経静脈
薬物動態データ
生物学的利用能20 - 55%
代謝肝臓代謝
半減期46 日[注釈 1]
排泄胆汁排泄
識別
CAS番号
1951-25-3
ATCコード C01BD01 (WHO)
PubChem CID: 2157
DrugBank APRD00288
ChemSpider 2072
KEGG D02910
化学的データ
化学式C25H29I2NO3
分子量645,31 g/mol
  • Ic1cc(cc(I)c1OCCN(CC)CC)C(=O)c2c3ccccc3oc2CCCC
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アミオダロン(Amiodarone)とは、Vaughan-Williams分類でⅢ群に分類される抗不整脈薬である[1]。商品名アンカロンサノフィ製造販売。作用機序は複雑であり他の抗不整脈薬が無効でも効果が期待できる一方で、重篤な副作用を惹起する危険性を持った医薬品である。

アミオダロンの塩酸塩が錠剤および注射剤として製剤化され、医薬品として承認を得ている[1]

効能

錠剤
生命に危険のある下記の再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か、または使用できない場合[2]
心室細動心室性頻拍
心不全(低心機能)または肥大型心筋症に伴う心房細動
注射剤
生命に危険のある心室細動または血行動態不安定な心室頻拍で、難治性かつ緊急を要する場合[3]
電気的除細動抵抗性の心室細動あるいは無脈性心室頻拍による心停止

使用の限定

難治性、致死性の不整脈に有効であるが、多彩でときに重篤な副作用が高率で発現するため、米国では他剤が無効な致死的不整脈に限定して使用が承認され、日本においても同様に適応患者が限定されて承認されているほか、致死的不整脈治療の充分な経験のある医師、諸検査の実施、緊急対応可能な設備の整った施設でのみ使用するなどの条件が付されている[1][4][5]

心肺蘇生

アミオダロンの注射製剤が2013年5月31日、「電気的除細動抵抗性の心室細動あるいは無脈性心室頻拍による心停止」の適応を追加取得した[6]

指定区分

日本の指定区分において、アミオダロン錠は毒薬に指定されている。注射剤についても2007年の承認当時から毒薬として指定されていたが、上記の心肺蘇生時に関する適応拡大に伴って、アミオダロン注射剤は毒薬から劇薬へと指定区分が変更された。これは、心肺蘇生という一刻を争う局面においては、毒薬指定であることによる管理の難しさ、緊急時対応の難しさが救命率に影響を及ぼしかねないという懸念から検討が行われた結果の例外的な措置である[7]

使用方法

内服の場合1日量を400 - 800 mgとして開始し、血中濃度を測定しながら1 - 2週間で1日量として100 - 200 mg程度に減量することが多い。有効血中濃度は500 - 1000ng/mLであるが、分布容積が巨大で、脂肪組織に分布した薬がゆっくり消失するため血中濃度半減期が非常に長く、投薬を中止しても血中濃度低下に時間を要するため注意が必要である。

副作用

副作用として間質性肺炎[8]甲状腺機能異常症亢進または低下[9][10][11]、角膜沈着物[12]、肝機能障害、消化器症状、皮膚症状などが知られている[13]。特に間質性肺炎は致死的となり得るため、投与中は聴診を欠かさずKL-6などの血中マーカーを定期的に測定することが多い。また急性膵炎のリスクが1.5倍上昇することがコホート内症例対照研究により示された[14]。また、一般的にアミオダロンは除細動閾値を上昇させる恐れのある薬剤として知られるため、ICDやCRT-Dなどのデバイスを植込む時には注意を払う必要がある。

作用機序

心筋細胞において、再分極に関わるKチャネルを阻害し活動電位の持続時間と不応期を延長させることで、リエントリーを抑え不整脈を抑制する。またアミオダロンはNaチャネルの阻害作用、βアドレナリン受容体受容体遮断作用、Ca2+チャネル阻害作用も持ち、これらも不整脈の抑制にはたらいている。[15]

構造

アミオダロンは分子中にベンゾフランの構造を持っている。ところで、アミオダロンとよく似た化合物として、血管拡張作用を持ったベンジオダロンが挙げられる。ベンジオダロンは、尿酸排泄促進作用を持ったベンズブロマロンの分子中の臭素を、ヨウ素に置換した化合物である。このため、アミオダロンはベンズブロマロンと構造が似ていると言われる場合がある[16]

注釈

  1. ^ 日本人被験者5人に経口投与後の活性代謝物の平均値。血漿からの消失半減期は19~53日

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c サノフィ・アベンティス、p1。
  2. ^ サノフィ・アベンティス、p11。
  3. ^ サノフィ・アベンティス、p10。
  4. ^ 山口巌「アミオダロン」『月刊治療学』1996年4月号、1996年4月、2010年2月24日閲覧 
  5. ^ サノフィ・アベンティス、p23。
  6. ^ “心肺蘇生時のアミオダロン使用が可能に” (2013年6月20日). 2014年11月9日閲覧。
  7. ^ “アンカロン注 150 の新効能・効果の取得と毒薬・劇薬指定区分の変更に関するお知らせ” (2013年5月31日). 2017年12月13日閲覧。
  8. ^ 坂巻文雄、「アミオダロンによる肺合併症への対応」 『心電図』 2002年 22巻 2号 p.91-96, doi:10.5105/jse.22.91
  9. ^ “アミオダロン塩酸塩 速崩錠 安全使用実践マニュアル”. 2014年11月9日閲覧。
  10. ^ “診断と治療に難渋したアミオダロン誘発甲状腺中毒症の1例”. 2014年11月9日閲覧。
  11. ^ 堀込実岐, 山崎恭平, 若林靖史、塩酸アミオダロン中止10カ月後に破壊性甲状腺炎をきたした拡張型心筋症の1例」 『心臓』 2010年 42巻 8号 p.1081-1086, doi:10.11281/shinzo.42.1081
  12. ^ “重篤副作用疾患別対応マニュアル 角膜混濁”. 2014年11月9日閲覧。
  13. ^ サノフィ・アベンティス、p27-31。
  14. ^ “アミオダロンで急性膵炎のリスクが上昇”. 日経メディカル (2015年2月4日). 2015年2月9日閲覧。
  15. ^ 『図解 薬理学』Toshitaka Nabeshima, Kazuhide Inōe, 鍋島俊隆., 井上和秀.、南山堂、Tōkyō、2015年、281-287頁。ISBN 978-4-525-72061-2。OCLC 922307421。https://www.worldcat.org/oclc/922307421 
  16. ^ Kumar V, Locuson CW, Sham YY, Tracy TS (October 2006). “Amiodarone analog-dependent effects on CYP2C9-mediated metabolism and kinetic profiles”. Drug Metab. Dispos. 34 (10): 1688–96. doi:10.1124/dmd.106.010678. PMID 16815961. 

参考文献

  • “医薬品インタビューフォーム:アンカロン錠100” (PDF). サノフィ (2015年9月). 2017年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月6日閲覧。
 
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