カティンの森

カティンの森
Katyń
監督 アンジェイ・ワイダ
脚本 アンジェイ・ワイダ
ヴワディスワフ・パシコフスキ
プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
原作 アンジェイ・ムラルチク
製作 ミハウ・クフィェチンスキ
出演者 マヤ・オスタシェフスカ
アルトゥル・ジミイェフスキ
音楽 クシシュトフ・ペンデレツキ
撮影 パヴェウ・エデルマン
編集 ミレニャ・フィエドレル
ラファウ・リストパト
配給 日本の旗 アルバトロス
公開 ポーランドの旗 2007年9月17日
日本の旗 2009年12月5日
上映時間 122分
製作国 ポーランドの旗 ポーランド
言語 ポーランド語
ドイツ語
ロシア語
製作費 15,000,000 ズウォティ
(500万ユーロ、約6億円)
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カティンの森』(カティンのもり、ポーランド語: Katyń)は、2007年(平成19年)製作・公開のポーランドの映画(en:Cinema of Poland)。

第二次大戦中、ソビエト連邦スモレンスク近郊に位置するカティンの森において、約2万2000人から2万5000人に及ぶポーランド人捕虜が内務人民委員部によって虐殺された「カティンの森事件」を題材とした映画である。R15+指定

略歴・概要

自らの父親もまた同事件の犠牲者である映画監督アンジェイ・ワイダが、80歳のときに取り組んだ作品である[1]。原作は、脚本家でありルポルタージュ小説家でもあるアンジェイ・ムラルチクが執筆した『死後 カティン』(Post mortem. Katyń, 工藤幸雄・久山宏一訳『カティンの森』)である。構想に50年、製作に17年かかっている。

撮影は『戦場のピアニスト』等でも知られるポーランド出身の撮影監督パヴェウ・エデルマン、音楽はポーランド楽派の作曲家クシシュトフ・ペンデレツキが手がけた。ポーランドでは、2007年9月17日に首都ワルシャワでプレミア上映され、同年同月21日に劇場公開された[2]

翌2008年(平成20年)、第58回ベルリン国際映画祭でコンペティション外上映された[2]

ワイダは、2010年(平成22年)4月7日、ロシアのウラジーミル・プーチン首相、ポーランドのドナルド・トゥスク首相が出席した「カティンの森事件」犠牲者追悼式典に参列した[3]。同月10日に開催予定であったがポーランド空軍Tu-154墜落事故のため中止となった「カティンの森事件」追悼式典のための大統領機には、搭乗してはいなかった[4][5]

日本では、2009年(平成21年)10月20日に東京国際映画祭で上映されたのちに[2]、アルバトロスが配給して同年12月5日に公開された[1]。翌2010年5月7日には同社が発売元となり、DVDがリリースされた[1]

ストーリー

1939年4月、ドイツドイツ・ポーランド不可侵条約を廃棄し、同年8月にドイツとソ連の間で独ソ不可侵条約が締結された。同年9月1日にドイツがポーランド侵攻することで第二次大戦が始まり、9月17日にソ連も同様にソ連・ポーランド不可侵条約を廃棄してポーランドの東部に侵攻した。独ソ不可侵条約には秘密議定書があり、両国はそれに従ってポーランドへの侵攻と分割占領を行ったのである。

ドイツ軍に追われた人々と、ソ連軍に追われた人々は、ポーランド東部のブク川で鉢合わせになった。その中に、クラクフから、夫のアンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ)を探しに来たアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)とその娘ニカ(ヴィクトリア・ゴンシェフスカ)がいた。そこで、逆にクラクフへ向かう大将夫人ルジャ(ダヌタ・ステンカ)に出会う。アンナは、ルジャ夫人にクラクフに戻るように勧められるが聞き入れなかった。

その後、アンナとニカは、駅でソ連へ連行される直前のアンジェイ、彼の友人イェジ(アンジェイ・ヒラ)らポーランド軍将校たちに出会うことができた。アンナはアンジェイに逃亡を勧めるが、アンジェイは軍への忠誠のため拒否し、家族と別れた。そして捕虜として教会に収容されたアンジェイはこれから起こることを日記に記そうと心に決める。

1943年4月、独ソ不可侵条約を破ってソ連領に侵攻したドイツ軍が、元ソ連領のカティンの森の近くで、一万数千人のポーランド将校の死体を発見した。ナチス・ドイツの宣伝機関は、これを1940年のソ連軍の犯行であることを大々的に報じた。

その後ドイツが敗北し、大戦が終結した1945年以後、ポーランドはソ連の衛星国として復興の道を歩み始めた。そしてソ連はカティンの森事件をドイツ軍の仕業であると反論し、事件の真相に触れることはタブーとなった。苦難を乗り越え、大戦から生き残った軍人や国民、カティンで親族を失った遺族らには厳しい現実が待ち受けていたのである。

やがてアンナのもとに、アンジェイ大尉の手帳が手渡された。手帳には、殺害の数日前までの出来事が、克明に記されていた。アンナは、アンジェイ大尉の身に起こったことを、改めて認識するのである。

スタッフ

  • プロデューサー : ミハウ・クフィェチンスキ
  • 監督 : アンジェイ・ワイダ
  • 原作 : アンジェイ・ムラルチク (pl:Andrzej Mularczyk)
  • 脚本 : アンジェイ・ワイダ、ヴワディスワフ・パシコフスキ(Władysław Pasikowski)、プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ (Przemysław Nowakowski)
  • 音楽 : クシシュトフ・ペンデレツキ
  • 撮影 : パヴェウ・エデルマン
  • 編集 : ミレニャ・フィエドレル、ラファウ・リストパト
  • 製作 : アクソン・スタジオ、TVP、ポーランド映画協会(Polski Instytut Sztuki Filmowej)、ポーランド・テレコム(Telekomunikacja Polska)

キャスト

  • マヤ・オスタシェフスカ (Maja Ostaszewska):アンナ
  • アルトゥル・ジミイェフスキ (Artur Żmijewski):アンジェイ大尉 - アンナの夫、カティンで殺害される
  • ヴィクトリア・ゴンシェフスカ (Wiktoria Gąsiewska) : ヴェロニカ(通称ニカ) - アンジェイとアンナの娘
  • マヤ・コモロフスカ (Maja Komorowska):アンジェイの母
  • ヴワディスワフ・コヴァルスキ (Władysław Kowalski):アンジェイの父・ヤン教授 - ヤギェウォ大学教授、講演会を名目に大学に招集され、同僚とともに収容所に送られ、病死
  • アンジェイ・ヒラ (Andrzej Chyra):イェジ中尉 - アンジェイの戦友 - カティンで殺害されず帰還、のちに「カティンの森事件」について、ソ連側の証人となったことを恥じて自殺
  • ダヌタ・ステンカ (Danuta Stenka):大将夫人ルジャ
  • ヤン・エングレルト (Jan Englert):大将 - カティンで殺害される
  • アグニェシュカ・グリンスカ (Agnieszka Glińska):イレナ - ピョトル中尉の妹
  • マグダレナ・チェレツカ (Magdalena Cielecka):アグニェシュカ - ピョトル中尉、イレナの妹
  • パヴェウ・マワシンスキ (Paweł Małaszyński):ピョトル中尉 - カティンで殺害される
  • アグニェシュカ・カヴョルスカ (Agnieszka Kawiorska):エヴァ - 大将とルジャの娘
  • アントニ・パヴリツキ (Antoni Pawlicki):タデウシュ(トゥル) - アンナの甥、父カジミエシュはカティンで殺害される
  • アンナ・ラドヴァン (Anna Radwan) : エルジュビェタ - タデウシュの母
  • クルィスティナ・ザフファトヴィチ (Krystyna Zachwatowicz):グレタ - ドイツ総督府の法医学研究所関係者。イェジ中尉の依頼により、アンナにアンジェイ大佐の手帳をわたす
  • セルゲイ・ガルマッシュ (Sergei Garmash) : ポポフ大尉 - 同情的でアンナを秘密警察から匿った赤軍将校
  • スタニスワヴァ・チェリンスカ (Stanisława Celińska) : スタシア - 大将の使用人
  • クシシュトフ・グロビシュ (Krzysztof Globisz) : 医師 ドイツ総督府の法医学研究所で、カティンの森の事件の調査をしている。ポーランドがソ連により解放されることになり、自分の身の危険を感じている。
  • マヤ・オスタシェフスカ
    マヤ・オスタシェフスカ
  • アルトゥル・ジミイェフスキ
    アルトゥル・ジミイェフスキ
  • ヴィクトリア・ゴンシェフスカ
    ヴィクトリア・ゴンシェフスカ
  • ヴワディスワフ・コヴァルスキ
    ヴワディスワフ・コヴァルスキ
  • アンジェイ・ヒラ
    アンジェイ・ヒラ
  • ダヌタ・ステンカ
    ダヌタ・ステンカ
  • ヤン・エングレルト
    ヤン・エングレルト
  • マグダレナ・チェレツカ
    マグダレナ・チェレツカ
  • パヴェウ・マワシンスキ
    パヴェウ・マワシンスキ
  • アグニェシュカ・カヴョルスカ
    アグニェシュカ・カヴョルスカ
  • アンナ・ラドヴァン
    アンナ・ラドヴァン
  • クルィスティナ・ザフファトヴィチ
    クルィスティナ・ザフファトヴィチ
  • スタニスワヴァ・チェリンスカ
    スタニスワヴァ・チェリンスカ
  • クシシュトフ・グロビシュ
    クシシュトフ・グロビシュ

受賞・ノミネート

  1. ^ a b c カティンの森、allcinema ONLINE, 2010年4月11日閲覧。
  2. ^ a b c Katyń, Internet Movie Database, 2010年4月11日閲覧。
  3. ^ カチンの森事件:露、ポーランド両首脳が犠牲者追悼、毎日新聞、2010年4月7日付、2010年4月11日閲覧。
  4. ^ “Prezydenckim Tu-154 leciały najważniejsze osoby w państwie” (Polish). 2010年4月10日閲覧。
  5. ^ “Polish president's plane crashes in Russia: ministry”. Google. 2010年4月10日閲覧。

原作

  • アンジェイ・ムラルチク『カティンの森』 工藤幸雄・久山宏一訳
集英社文庫、2009年10月。ISBN 4087605906

関連項目

外部リンク

1950年代
  • 世代 (1954)
  • 地下水道 (1956)
  • 灰とダイヤモンド (1958)
  • ロトナ (1959)
1960年代
  • 夜の終りに (1960)
  • シベリアのマクベス夫人 (1961)
  • サムソン (1961)
  • 二十歳の恋 (1962)
  • 灰 (1965)
  • すべて売り物 (1968)
  • 蝿取り紙 (1969)
1970年代
  • 白樺の林 (1970)
  • 戦いのあとの風景 (1970)
  • 婚礼 (1972)
  • 約束の土地 (1974)
  • 死の教室 (1976)
  • 大理石の男 (1977)
  • 麻酔なし (1978)
  • ヴィルコの娘たち (1979)
1980年代
  • ザ・コンダクター (1980)
  • 鉄の男 (1981)
  • ダントン (1983)
  • ドイツの恋 (1983)
  • 愛の記録 (1985)
  • プルースト、わが救い (1988)
  • 悪霊 (1988)
1990年代
2000年代
  • カティンの森 (2007)
  • 菖蒲 (2009)
2010年代
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