キャンディス・オーウェンズ

キャンディス・オーウェンズ
Candace Owens
2018年撮影
生誕 Candace Amber Owens
(1989-04-29) 1989年4月29日(35歳)
米国コネチカット州スタンフォード
職業 政治評論家、政治活動家、ポッドキャスト番組司会、作家
活動期間 2017–現在
政党 共和党
配偶者
ジョージ・ファーマー (m. 2019)
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キャンディス・アンバー・オーウェンズ・ファーマー英語: Candace Amber Owens Farmer, 1989年4月29日 - )は、アメリカの保守系の作家、政治評論家、政治活動家である。当初はドナルド・トランプ大統領や共和党に批判的であったが、その後、支持に転じた。ブラック・ライヴズ・マターや民主党には批判的である。

生い立ち

オーウェンズはコネチカット州スタンフォードで、4人兄弟の3番目として生まれた。両親が離婚したため、11~12歳ごろから祖父母によって育てられる。父方の祖父はアフリカ系アメリカ人ノースカロライナ州生まれ。祖母はアメリカ領ヴァージン諸島セント・トーマス島の出身である。

2007年、元友人やスタンフォード市長の息子を含む五人の白人同級生らに人種差別的な言葉でリンチを表す「タール羽の刑にしてやる」などの殺害脅迫と人種的および性的中傷をうけたと主張、捜査と裁判においては全米黒人地位向上協会 (NAACP) の支援を受け。また NAACP から通学時の護衛などの支援も受けた[1]。2008年の連邦裁判では、学校側が生徒を人種的な攻撃から守らなかったと主張、学校側は37,500ドルをオーウェンズに支払った[2][3]

コネチカットのスタンフォード高校を卒業後、ロードアイランド大学に進学したが、学資ローンの問題で退学を余儀なくされた[4]

2015年、マーケティングサイトDegree180を共同設立し、「共和党のティーパーティーの狂った狂気」といった投稿記事も書いていた[4]

2016年、人種差別的な殺害脅迫を経験したオーウェンズは、デジタル・フットプリントを利用しネットいじめを追跡するサイト SocialAutopsy.com を立ち上げた。これが、ネット上におけるプライバシーを侵害するものとして物議をかもし、さらにゲーマーゲート集団嫌がらせ事件に介入[5]、自身の個人情報もネットにさらされ激しく非難された。その渦中で、マイロ・ヤノプルスマイク・セルノヴィッチオルタナ右翼のサポートをうけ、彼女自身の言葉によれば「一夜にして保守派になった」という[4]

保守派としての活動

2017年頃から、オーウェンズは構造的人種差別、制度的不平等、アイデンティティ・ポリティクスなどのリベラル派のレトリックを批判し、保守系の言論界で名を知られるようになる。2017年に政治をテーマとした動画をYouTubeに投稿し始め、同年9月には、アメリカにおける黒人保守派の運動を推進することを目的に、Red Pill BlackというウェブサイトおよびYouTubeチャンネルを立ち上げた[6]PragerUのYouTubeチャンネルで「ザ・キャンディス・オーウェンズ・ショー」の司会を務めている[7]

2017年11月、ターニング・ポイントUSAという右派系非営利組織がオーウェンズをディレクターとして採用することを発表 (2019年5月に退任) [8]

2018年4月、ツイートに「トランプ大統領は自由な世界のリーダーであると同時に、救世主でもあると心から信じている」と投稿[9]。さらにカニエ・ウェストが「キャンディス・オーウェンズの考え方はいいね」とツイートし、大きな話題となる[10]。5月、ドナルド・トランプ大統領がオーウェンズが「この国の政治に大きなインパクトを与えている」と発言[11]。10月、イギリスのブレクジットをもじり、黒人は民主党を去るべきというキャンディスの主張を表す Blexit のロゴを「自分の親愛なる友人のカニエが制作したもの」として紹介した[12]。しかしカニエは関与を否定[13]。オーウェンズはブログで謝罪したが「私は一度もカニエがロゴをデザインしたとは言っていない」と主張した[14][15]。カニエは自分が信じてもいない政治的メッセージを拡散するのに利用されていると不快感を表明した[16][17]。BBC は アメリカの Blexit がどう歴史認識を取り間違えているのか検証した[18]

2019年3月15日にニュージーランドで51人を殺害した白人至上主義者 (クライストチャーチモスク銃乱射事件) は、その声明のなかで 「彼女の話を聞くたび、彼女の洞察力と物の見方に圧倒され、僕はどんどん暴力を信じていった」と言及していた[19][20]。4月、ヘイトクライムと白人至上主義者に関する下院司法委員会での証言の中で、オーエンスは、共和党が南部での支持を拡大するために人種差別を利用したという南部戦略 (英語版) は「ありえない」「神話」であると主張したが、これは米史研究者らによって否定され、プリンストン大学のケビン・クルーゼはこの発言を「まったくナンセンス」だと批判した[21]

11月、フォックスに出演し、オーウェンズは自分が生きてきた中で、人種問題などまったくなかったと強調したが、これは2008年の人種差別から生徒を守らなかったと学校側を訴えた訴訟とその際の NAACP の支援を忘れているのではないかと話題になった[22][23]

2020年4月、オーウェンズは政界進出の意思があることを明らかにしたが[24]、一方で大統領選挙の共和党党大会に呼ばれなかったことがネットの話題となった[25]。6月、オーエンスは、ジョージ・ソロスジョージ・フロイドの死の抗議者に資金提供していると主張したが、それはすぐに誤りである指摘とされた[26]。その後まもなく、彼女はジョージ・フロイドを「黒人アメリカの壊れた文化」であり「恐ろしい人間」「彼が殉教者扱いされることは私をうんざりさせる」と語り[27]、トランプ大統領がこれらの発言をリツイートし1億回近く再生された[28]

11月、ファッション誌『ヴォーグ』の表紙を飾ったハリー・スタイルズのドレス姿に対し「強靭な男性なしで生き残れる社会なんて存在しない」と、「男性が着実に女性化している」ことをマルクス主義と関連させてツイートしたことに対し、著名人が続々と批判の投稿をよせた[29][30]

著作

『Blackout: How Black America Can Make Its Second Escape from the Democrat Plantation』(2020年9月、Threshold Editions社刊)

  • 『ブラックアウト アメリカ黒人による、“民主党の新たな奴隷農場"からの独立宣言』(2022年4月、我那覇真子訳、ジェイソン・モーガン監修)

私生活

2019年、ジョージ・ファーマーとの婚約を発表[31]。2019年8月30日にバージニア州シャーロッツビルのトランプ・ワイナリーで結婚式を挙げる。ファーマーはオックスフォード大学卒業後、ヘッジ・ファンドで働いていた。彼の父親はイギリス貴族院議員のマイケル・ファーマー。2020年に第一子を妊娠したことを発表[32]

日本での受容

日本でオーウェンズを積極的に紹介するメディアには、アメリカで親トランプの陰謀論や誤情報を拡散したとして問題になっている大紀元時報[33][34]などがある[35][36]。また土方細秩子は、偽情報で「バッシング」されているオーウェンズの投稿に関し、「国中がオーウェンズ発言をなかったこと、聞かなかったことにしよう」とする風潮で異論が排除されていると主張している[37]

参考資料

ファクトチェック Politifact - Candace Owens

出典

  1. ^ “NAACP escorts alleged hate crime victim to school”. sip-trunking.tmcnet.com. 2020年12月12日閲覧。
  2. ^ “Schools pay $37,500 to Owens family” (英語). The Hour (2008年1月30日). 2020年12月12日閲覧。
  3. ^ “Racist threats case filed by Stamford High student settled for $37,500 - NewsTimes”. web.archive.org (2019年4月10日). 2020年12月12日閲覧。
  4. ^ a b c Zadrozny, Brandy (2018年6月23日). “YouTube Tested, Trump Approved: How Candace Owens Suddenly Became the Loudest Voice on the Far Right”. NBC News. オリジナルの2019年4月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190429023019/https://www.nbcnews.com/news/us-news/youtube-tested-trump-approved-how-candace-owens-suddenly-became-loudest-n885166 2018年6月29日閲覧。 
  5. ^ “The Strange Tale of Social Autopsy, the Anti-Harassment Start-up That Descended Into Gamergate Trutherism” (英語). Intelligencer (2016年4月18日). 2020年12月12日閲覧。
  6. ^ Ames, Elizabeth (2017年9月13日). “Liberals Sick of the Alt-Left Are Taking 'the Red Pill'”. Fox News. 2017年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  7. ^ Petersen, Anne Helen (2019年5月1日). “Charlie Kirk And Candace Owens' Campus Tour Is All About The Owns”. BuzzFeed News. 2019年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月3日閲覧。
  8. ^ McGrady, Michael (2017年11月21日). “In Liberal Illinois, TPUSA's Charlie Kirk and Other Speakers Strike a Chord with Conservative Crowds”. Turning Point USA News. 2018年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月13日閲覧。
  9. ^ “Who Is Candace Owens? Here’s What You Need To Know About Kanye’s Trump-Loving Fave” (英語). Essence. 2020年12月12日閲覧。
  10. ^ Garcia Lawler, Opheli (2018年4月21日). “Kanye West Tweets that He Likes the Way Far-Right Personality Candace Owens 'Thinks'”. The FADER. オリジナルの2018年4月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180422055658/http://www.thefader.com/2018/04/21/kanye-west-far-right-candace-owens 2018年4月22日閲覧。 
  11. ^ Shelbourne, Mallory (2018年5月9日). “Trump Praises Conservative Activist Candace Owens as a 'Very Smart Thinker'”. The Hill. http://thehill.com/homenews/administration/386857-trump-praises-candace-owens-as-a-very-smart-thinker 2018年5月9日閲覧。 
  12. ^ Schwab, Nikki (2018年10月28日). “Kanye West designed T-shirts urging black people to bail on Democrats” (英語). Page Six. 2020年12月12日閲覧。
  13. ^ “https://twitter.com/kanyewest/status/1057382888520499201”. Twitter. 2020年12月12日閲覧。
  14. ^ “808s and Heartbreak – Candace Owens” (英語). 2020年12月12日閲覧。
  15. ^ Jacobs, Todd (2019年4月19日). “The untold truth of Candace Owens” (英語). NickiSwift.com. 2020年12月12日閲覧。
  16. ^ Klinkenberg, Brendan (2018年10月30日). “Kanye West Distances Himself From Alt-Right Provocateur Candace Owens” (英語). Rolling Stone. 2020年12月22日閲覧。
  17. ^ “K・ウエストさん、政治に「利用された」 創作に専念と宣言”. www.afpbb.com. 2020年12月22日閲覧。
  18. ^ “米国の「BLEXIT」とは 歴史をどう間違えているのか”. BBCニュース (2018年11月1日). 2021年1月2日閲覧。
  19. ^ “NZ銃乱射事件 タラント容疑者はどんな人生を歩んできたのか? 北朝鮮にも旅行し、父親は日本との接点も(飯塚真紀子) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2020年12月26日閲覧。
  20. ^ “極右暴力の新しい脅威 ニュージーランドのモスク銃撃”. BBCニュース (2019年3月22日). 2020年12月26日閲覧。
  21. ^ Washington, District of Columbia 1100 Connecticut Ave NW Suite 1300B. “PolitiFact - Candace Owens' false statement that the Southern strategy is a myth” (英語). @politifact. 2020年12月26日閲覧。
  22. ^ “Pants on Fire: Candace Owens Claims She Didn't Have 'Race Issues' Growing Up, but a 2008 Discrimination Suit Says Otherwise” (英語). Atlanta Black Star (2019年11月13日). 2020年12月17日閲覧。
  23. ^ “Candace Owens Says She Never Had ‘Race Issues’ Even Though She Sued For Racial Discrimination” (英語). NewsOne (2019年11月12日). 2020年12月22日閲覧。
  24. ^ “Conservative activist Candace Owens 'considering' running for office”. Fox News. 2020年6月4日閲覧。
  25. ^ “Twitter Reacts to Candace Owens Being Snubbed As Speaker For Republican National Convention” (英語). Black Enterprise (2020年8月24日). 2020年12月22日閲覧。
  26. ^ Washington, District of Columbia 1100 Connecticut Ave NW Suite 1300B. “PolitiFact - No, George Soros and his foundations do not pay people to protest” (英語). @politifact. 2020年12月26日閲覧。
  27. ^ World, Republic. “Trump targets George Floyd; shares interview saying protest symbol was 'not a good person'”. Republic World. 2020年12月26日閲覧。
  28. ^ “Social Media Giants Support Racial Justice. Their Products Undermine It. - The New York Times”. web.archive.org (2020年6月22日). 2020年12月26日閲覧。
  29. ^ 望美, 望月 (2020年11月17日). “ハリー・スタイルズの 「ドレス姿」への批判にセレブたちが反論”. Cosmopolitan. 2020年12月26日閲覧。
  30. ^ “ハリー・スタイルズが「女性用の服」を着ることへの批判を“仕事仲間”が擁護 - フロントロウ -海外セレブ情報を発信”. front-row.jp. 2020年12月26日閲覧。
  31. ^ “Candace Owens's Charlottesville wedding | Spectator USA”. Spectator (2019年6月6日). 2019年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月4日閲覧。
  32. ^ Owens, Candace [@RealCandaceO] (2020年9月6日). "I'm almost 6 months pregnant and..." X(旧Twitter)より2020年9月20日閲覧
  33. ^ “Facebook Removes Another Misinformation Network Linked to Epoch Times” (英語). Snopes.com. 2020年12月26日閲覧。
  34. ^ 藤倉善郎 (2020年11月23日). “米大統領選をめぐるフェイクニュースと「新宗教系メディア」の関係”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 2020年12月26日閲覧。
  35. ^ “「被害者意識から抜け出して」米黒人女性が左派の支持者に呼びかけ”. 大紀元時報. 2020年12月26日閲覧。
  36. ^ “左翼エリートの選民思想(後編) (大紀元時報 エポックタイムズ)”. LINE NEWS. 2020年12月26日閲覧。
  37. ^ “米抗議デモ、異論を封じ込める風潮への違和感”. WEDGE Infinity(ウェッジ) (2020年6月13日). 2020年12月26日閲覧。