ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像

『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』
オランダ語: Portret van een man 英語: Portrait of a Man, probably a Member of the Van Beresteyn Family

作者	レンブラント・ファン・レイン
製作年	1632年
素材	キャンバス上に油彩
寸法	111.8 cm × 88.9 cm (44.0 in × 35.0 in)
所蔵	メトロポリタン美術館、ニューヨーク

『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』（ファン・ベレステインけのいちいんとおもわれるだんせいのしょうぞう、英: Portrait of a Man, probably a Member of the Van Beresteyn Family）、または『ある男性の肖像』（あるだんせいのしょうぞう、蘭: Portret van een man、英: Portrait of a Man）は、17世紀オランダ黄金時代の巨匠レンブラント・ファン・レインが1632年にキャンバス上に油彩で制作した肖像画である。石臼型カラーに替わって1630年代の新しいファンションであったレースのカラーを着けた男性を表しており、『ファン・ベレンステイン家の一員と思われる女性の肖像（英語版）』の対となる作品である。レンブラントの対となる肖像画は、ごくわずかしか現存していない。両作品とも、H.O.ハヴマイアー（英語版）夫人の遺贈で、1929年にニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵された^[1]^[2]。

作品

モデルの男性は、おそらくコルネリス・ファン・ベレステイン (Cornelis van Beresteyn、1586–1638年) である。彼はデルフトの富裕な市長であった。彼の抑制されたポーズとしかつめらしい表情は、レンブラントがアムステルダムの人物を描いた時に付与した動きと親しみやすさとは対照的である。当時、デルフトとその隣の宮廷都市ハーグの肖像画は、1500年代半ばのスペインの宮廷肖像画に遡る伝統に即し、きわめて保守的なものであった。レンブラントは、1632年にわずかの肖像画を描いたことが知られている^[1]。

この絵画は、1914年に、研究者ホフステーデ・デ・フロート（英語版）により以下のように記述されている。

624番。ファン・ベレンステイン＝フフト (Van Beresteyn-Vucht) 家の男性。4分の3身体像、等身大。50歳くらい。彼は、やや右側に身体を傾けて立っており、自分の真正面を見ている。帽子は被っていない。白髪交じりの髪の毛を立てた髪型をしており、先の尖った顎髭を生やしている。右手を胸の上に置いている。手袋をした左手はもう一方の手袋を掴み、マントから覗いている。灰色と黒の縞模様のある絹のコート、ぴったりとしたレース付きのプリーツのあるカラー、細いカフスを身に着けている。明るい光が上方左側から射し込んでいる。暗灰色の背景で、右側は光に照らされている。絵画は、新しいキャンバスに移し替えられた時に大きな損傷を受けている。モデルについては、何も知られていない。母方の家系を通して、ベレンステイン家につながるどこかの家族に属していたのかもしれない。[対作品 625番] 。右肘に描かれている線の上に「RH L van Ryn 1632」の署名あり。キャンバス、縦44と1/2インチ、横35と1/2インチ。ニューヨークの故H. O. ハヴマイア―氏のコレクション^[3]。

本作は、対となる『ファン・ベレンステイン家の一員と思われる女性の肖像』とともに20世紀の大部分のレンブラント作品目録に含まれているが、この女性像は最近、レンブラントの真作ではないと議論されている。しかし、いまだに同時代の工房と関連付けられ、対作品とされている。様々な試みにもかかわらず、来歴はモーリック城（英語版） (Chateau Maurik) からハヴマイアーが購入した時点より以前に遡ることができず、ホフステーデ・デ・フロートは、女性像は男性像同様に、女性の所有者から女性の所有者へと継承されたかもしれず、描かれている2人はベレンステイン家とはまったく関連していないかもしれないと述べている。

ギャラリー

男性像 (左側に掛けられている)
女性像 (右側に掛けられている)

脚注

^ ^a ^b “Portrait of a Man, possibly a member of the Beresteyn family”. メトロポリタン美術館公式サイト (英語). 2023年4月1日閲覧。
^ “Portrait of a Man”. オランダ美術史研究所公式サイト (英語). 2023年4月1日閲覧。
^ 624. A Man of the van Beresteyn-Vucht Family" in Hofstede de Groot, 1914 この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。

外部リンク

メトロポリタン美術館公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』 (英語)
オランダ美術史研究所公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『ある男性の肖像』 (英語)
レンブラント研究プロジェクト公式サイト、レンブラント・ファン・レイン『ある男性の肖像』 (英語)
Cat. no. 143 in Dutch Paintings in the Metropolitan Museum of Art Volume I, by Walter Liedtke, Metropolitan Museum of Art, 2007

レンブラント・ファン・レイン

絵画

『聖ステファノの石打ち』（1625年）
『バラムとロバ』（1626年）
『愚かな金持ちの譬え』（1627年）
『エジプトへの逃避』（1627年）
『論争する二人の老人』（1628年）
『アトリエの画家』（1628年）
『銀貨30枚を返すユダ』（1629年）
『首当てをつけた自画像』（1629年頃）
『サムソンとデリラ』（1629年-1630年）
『エルサレムの滅亡を嘆くエレミヤ』（1630年）
『アンドロメダ』（1630年）
『テュルプ博士の解剖学講義』（1631年）
『プロセルピナの略奪』（1631年）
『ラザロの復活』（1630年-1632年頃）
『ヤーコブ・デ・ヘイン3世の肖像』（1632年）
『ファン・ベレステイン家の一員と思われる男性の肖像』（1632年）
『エウロペの誘拐』（1632年）
『東方三博士の礼拝』（1632-1633年）
『ガリラヤの海の嵐』（1633年）
『キリスト昇架』（1633年）
『キリスト降架』（1633年）
『使徒パウロ』（1633年頃）
『ヨハネス・ウーテンボハールトの肖像』（1633年）
『アクタイオンとカリストのいるディアナとニンフの水浴』（1634年）
『フローラ』（1634年）
『ホロフェルネスの饗宴におけるユディト』（1634年）
『ガニュメデスの略奪』（1635年）
『イサクの犠牲』（1635年）
『書斎のミネルヴァ』（1635年）
『舅を脅かすサムソン』（1635年）
『ダナエ』（1636年）
『ペリシテ人に目を潰されるサムソン』（1636年）
『スザンナ』（1636年）
『トビアスの家族から去る大天使ラファエル』（1637年）
『売春宿の放蕩息子』（1637年）
『石橋のある風景』（1637年）
『アーチ型の橋のある風景』（1637年頃）
『ポーランドの貴族』（1637年）
『ベルシャザルの饗宴』（1635年-1638年）
『サムソンの婚宴』（1638年）
『善きサマリア人のいる風景』（1638年）
『マリア・トリップの肖像』（1639年頃）
『34歳の自画像』（1640年）
『額縁の中の少女』（1641年）
『城のある風景』（1640-1642年頃）
『ダビデとヨナタン』（1642年）
『夜警』（1642年）
『姦淫の女』（1644年）
『天使のいる聖家族』（1645年）
『ヨセフの夢』（1645年）
『スザンナと長老たち』（1647年）
『風車』（1645年-1648年）
『エマオの晩餐』（1648年）
『キリストの頭部』（1645年-1650年）
『ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス』（1653年）
『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』（1654年）
『水浴する女』（1654年）
『フローラ』（1654頃）
『屠殺された牛』（1655年）
『パラス・アテナ』（1655年頃）
『金の鎖のネックレスとイヤリングをつけた毛皮の上着の自画像』（1655年）
『デイマン博士の解剖学講義』（1656年）
『ヨセフの息子たちを祝福するヤコブ』（1656年）
『二つの円のある自画像』（1655年–1669年頃）
『十戒の石板を破壊するモーセ』（1659年）
『ベレー帽と立襟の自画像』（1659年）
『聖ペテロの否認』（1660年）
『エステルの饗宴におけるアハシュエロス王とハマン』（1660年）
『使徒パウロに扮した自画像』（1661年）
『聖マタイと天使』（1661年頃）
『クラウディウス・キウィリスの謀議』（1661年–1662年）
『布地商組合の見本調査官たち』（1662年）
『詩を口述するホメロス』（1663年）
『ルクレティア』（1664年）
『運命を悟るハマン』（1665年頃）
『ヘラルト・デ・ライレッセの肖像』（1665年-1667年）
『放蕩息子の帰還』（1668年）
『ゼウクシスとしての自画像』（1668年頃）
『ユダヤの花嫁』（1665年-1669年）
『63歳の自画像』（1669年）

主題

レンブラント
研究

鑑定	レンブラント・カタログ・レゾネ
主要な専門家と学者	ケネス・クラークサミュエル・ファン・ホーホストラーテンアルノルト・ホウブラーケン