マイケル・フリン

曖昧さ回避 この項目では、アメリカの外交アドバイザーのマイケル・フリンについて説明しています。アメリカのSF作家のフリンについては「マイクル・フリン」をご覧ください。
マイケル・フリン
Michael Flynn
第25代 国家安全保障問題担当大統領補佐官
任期
2017年1月20日 – 2017年2月13日
大統領ドナルド・トランプ
代理官K・T・マクファーランド
前任者スーザン・ライス
後任者H・R・マクマスター
アメリカ国防情報局長官
任期
2012年7月24日 – 2014年8月7日
大統領バラク・オバマ
前任者ロナルド・バージェス
後任者デイビット・シェッド(代理)
個人情報
生誕Michael Thomas Flynn
1958年12月??
メリーランド州フォート・ミード
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
配偶者ロリ・アンドレード
子供2
教育ロード・アイランド大学理学士
ゴールデンゲート大学MBA
アメリカ陸軍指揮幕僚大学(MMAS)
アメリカ海軍大学修士
署名
公式サイト公式ウェブサイト
兵役経験
所属国アメリカ合衆国の旗 アメリカ
所属組織 アメリカ陸軍
軍歴1984年 - 2014年
最終階級 中将
部隊アメリカ国防情報局
アメリカ戦略軍情報・監視・偵察統合機能構成部隊
戦闘グレナダ侵攻
民主主義擁護作戦(OUD)
不朽の自由作戦
イラク戦争
受賞DDSM
防衛功労章(4回)
勲功章(2回)
青銅星章(4回)
功績章(6回)
統合任務功績章
陸軍称揚章(5回)

マイケル・トーマス・フリン: Michael Thomas Flynn1958年12月 - )は、アメリカ外交アドバイザー、元軍人。最終階級は陸軍中将、2012年から2014年まで国防情報局長官を務めた。2017年にトランプ大統領に国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命されたが、ロシア疑惑の発覚を受け辞任に追い込まれた。イラク戦争やアフガニスタン紛争に従軍している。

略歴

1958年ロードアイランド州ミドルタウンで、銀行家のチャールズ・フランシス・フリンと不動産業のヘレン・フランシスの子として生まれる。 1981年にロードアイランド大学経営学部(Management science)で理学士を取得した。予備役将校訓練課程(ROTC)を修了している[1]1981年にアメリカ陸軍に入隊し、情報畑を歩む。フリンはイスラム教について「悪性のガンである」と発言し[2]、アメリカのメディアから宗教差別であると非難された。2016年より大統領選挙に立候補していたドナルド・トランプの軍事顧問として雇われ、選挙戦でトランプ氏に助言する一方、世界中の顧客を相手にしたコンサルティング業も行っていた。顧客にはトルコレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に強いつながりを持つ人物も含まれている[3][注釈 1]。2016年7月にはネオコン[4]マイケル・リーディン(英語版)と『The Field of Fight: How We Can Win the Global War Against Radical Islam and Its Allies』という本を出版し[5]イスラム過激派イラン北朝鮮など反米・反イスラエル国家への強硬姿勢を示した[4][6][7]

2016年10月11日に来日し、自民党本部で講演を行った。菅義偉官房長官などと会談を行っている[8]。トランプの選挙勝利後、国防長官や大統領補佐官などに起用されることが検討されていると報じられていたが[9]、最終的には国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名された[10]

2017年2月13日、トランプ政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官を辞任した。補佐官に就任前のフリンがセルゲイ・キスリャク・ロシア連邦駐米大使とロシア制裁問題を話し合った疑惑は、許可を受けない民間人が外交交渉に介入することを禁じる法律であるローガン法(Logan Act)に抵触するおそれがあったと報じられている[11]

2017年11月、トルコのエルドアン大統領の政敵でアメリカに亡命中の穏健派イスラム教指導者フェトフッラー・ギュレン師を拘束しトルコ政府に引き渡しトルコ国内に監獄島へ移送するという仕事を息子のフリン・ジュニアとともに報酬1500万ドルで受け、その打ち合わせを2016年アメリカ大統領選後の12月にトルコ政府の高級官僚らとニューヨーク市内で行っていた疑いでミュラー特別検察官が捜査を開始したと報じられた[12]

2017年11月、これまでトランプ側の弁護団と行っていたロシア捜査に関する情報の共有を打ち切ったと報道[13]ロバート・ミュラー特別検察官は12月1日、トランプ大統領の最側近だったフリンの訴追を明らかにした。駐米ロシア大使との接触に関して連邦捜査局(FBI)に偽証したとしている。1日、ワシントンの裁判所で罪を認め、捜査に全面協力すると表明、司法取引に応じた。ロシア大使との接触はトランプ氏の政権移行チーム幹部から直接指示を受けたと説明した。訴追文書では接触を指示した幹部の氏名は明らかにされていないが、米メディアはトランプ氏の「側近中の側近」の娘婿ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問だと報じた。 フリンの声明などの要旨は次の通り。

  • 昨年12月、駐米ロシア大使と対ロシア制裁を協議したことについて連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をした。
  • ロシア大使との接触に関して、政権移行チーム幹部から指示を受けていた。
  • 何カ月もの間、事実に反する糾弾に耐えるのは多大な苦痛だった。
  • 有罪を認め、ミュラー特別検察官に協力することに合意したのは、家族や国家を考えてのことだ。自身の行動について全責任を負う。[14]

ミュラー特別検察官はフリンに対し実刑を求刑しない方針を明らかにしていたが、量刑言い渡しが予定されていた2018年12月18日、ワシントン連邦地裁のエメット・サリバン判事は、フリンに対し「自分の国を売り払った」と非難し厳しい禁錮刑を科す可能性を示す一方、言い渡しを延期した[15][16]。2019年12月18日に改めて判決言い渡しが予定されていたが、11月27日に再度延期された[17]

2020年になってからFBIの捜査担当者に不正があったとして司法取引を取り下げ無罪を訴える立場に転じ、5月7日、司法省はフリンの起訴を取り下げた[18]。4月下旬に捜査担当者のやりとりを記した内部資料が新たに発見されており、このうちフリンに対する聴取が行われた日である2017年1月24日付の手書きメモには「我々の目標は何か。真実を自白させるか、偽証させることで起訴するか(補佐官を)辞任させるか」と書かれていた。司法省は7日の文書で「新たに見つかった資料など全てを検証した」と説明しており、内部メモが起訴の取り下げにつながった可能性がある[19][20][21][22]

ワシントン連邦地裁は起訴取り下げの正式承認を見送って第三者に意見を求めていたが[23]、6月24日にワシントンの連邦控訴裁判所は起訴撤回を連邦地裁に命じる判決を下した[24]。同年11月25日、トランプはフリンに対し恩赦を行った[25]。顧問弁護士はシドニー・パウエル

脚注

注釈

[脚注の使い方]
  1. ^ フリンは、政府の役職に戻ることになれば選挙戦中のコンサルティング業で築いたビジネス上の人脈とは縁を切ると宣言している。

出典

  1. ^ “Saluting A Family Legacy”. The University of Rhohd Island (2009年4月10日). 2017年2月19日閲覧。
  2. ^ http://www.cnn.com/2016/11/.../kfile-michael-flynn-august-speech/
  3. ^ マイケル・フリン氏とは何者か トランプ政権の国家安全保障補佐官、イスラム嫌悪を扇動(THE HUFFINGTON POST 2016年11月26日)
  4. ^ a b “Realist or neocon? Mixed messages in Trump advisor’s foreign policy vision”. ブルッキングス研究所 (2016年7月19日). 2016年12月3日閲覧。
  5. ^ The Field of Fight: How We Can Win the Global War Against Radical Islam and Its Allies - Lieutenant General (Ret.) Michael T. Flynn, Michael Ledeen - Google Books (英語)
  6. ^ Lake, Eli (2016年7月12日). “Trump adviser outlines an all-out war on terror”. ジャパン・タイムズ. 2016年12月3日閲覧。
  7. ^ “Read an Excerpt of Lt. Gen. Michael Flynn's 'The Field of Fight'”. ABCニュース (2016年7月10日). 2016年12月3日閲覧。
  8. ^ トランプ氏と信頼構築急ぐ=安倍首相、異例の早期会談 時事通信 2016年11月10日
  9. ^ <トランプの米国>(上) TPP否定「貿易は2国間で」 東京新聞 2016年11月11日 朝刊
  10. ^ President-Elect Donald J. Trump Selects U.S. Senator Jeff Sessions for Attorney General, Lt. Gen. Michael Flynn as Assistant to the President for National Security Affairs and U.S. Rep. Mike Pompeo as Director of the Central Intelligence Agency NOVEMBER 18, 2016 • MAKING NEWS
  11. ^ “Michael Flynn Resigns as National Security Adviser”. The New York Times (2017年2月13日). 2017年2月14日閲覧。
  12. ^ 『特別検察官はフリン元大統領補佐官に関する捜査を開始』 2017年11月11日 Onebox News
  13. ^ 『フリン前補佐官がトランプとのロシア捜査の情報共有を中止』 2017年11月24日 Onebox News
  14. ^ Leonnig, Carol D.; Dawsey, Josh; Barrett, Devlin; Zapotosky, Matt (2017年12月1日). “Michael Flynn pleads guilty to lying to the FBI” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/politics/michael-flynn-charged-with-making-false-statement-to-the-fbi/2017/12/01/e03a6c48-d6a2-11e7-9461-ba77d604373d_story.html 2017年12月1日閲覧。 
  15. ^ ロシア疑惑捜査 有罪認めた元トランプ氏補佐官に実刑求刑せず BBC 2018年12月5日
  16. ^ 米判事、元大統領補佐官を「売国奴」と非難 判決言い渡しは延期 時事通信 2018年12月18日
  17. ^ フリン元大統領補佐官の判決言い渡し延期=米連邦地裁 ロイター 2019年11月28日
  18. ^ 米司法省、元大統領補佐官の起訴取り下げ 日本経済新聞 2020年5月8日
  19. ^ “米司法省、元大統領補佐官の起訴取り下げ”. 日本経済新聞 (2020年5月8日). 2020年5月12日閲覧。
  20. ^ “Unsealed FBI documents show officials discussed whether to get former National Security Adviser Michael Flynn 'to lie, so we can prosecute him or get him fired' during his controversial White house interview”. The Daily Mail Online (2020年4月30日). 2020年5月12日閲覧。
  21. ^ “Mike Flynn’s Lawyers Say Newly Unsealed Documents Show FBI Tried to Set Him Up”. The Wall Street Journal (2020年4月30日). 2020年5月12日閲覧。
  22. ^ Michael Flynn exhibit -- FBI notes
  23. ^ トランプ氏元側近の起訴、裁判所が取り下げ承認見送り 政治介入を懸念か、第三者の意見公募へ 日本経済新聞 2020年5月13日
  24. ^ 「トランプ氏元側近の起訴撤回を」 米控訴裁が判決 日本経済新聞 2020年6月25日
  25. ^ “トランプ氏、元側近フリン氏に恩赦 批判必至”. 日本経済新聞. (2020年11月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66652130W0A121C2EAF000/ 2020年11月26日閲覧。 

関連項目

外部リンク

  • Michael T. Flynn (英語)
  • Michael Flynn (@GenFlynn) - X(旧Twitter)(英語)(凍結)
公職
先代
スーザン・ライス
アメリカ合衆国
国家安全保障問題担当大統領補佐官

2017年1月20日 - 2017年2月13日
次代
キース・ケロッグ(代行)
  • 表示
  • 編集
典拠管理データベース ウィキデータを編集
全般
  • ISNI
  • VIAF
国立図書館
  • ドイツ
  • イスラエル
  • アメリカ
  • 日本
  • オランダ
  • ポーランド
その他
  • IdRef