市民工学
市民工学(しみんこうがく、英:civil engineering)とは工学の分野の一つ。伝統的な分野である土木工学を基礎とした幅広い分野が内容となっており、環境学や安全学なども含まれている。
社会基盤の建設と保全を通じて、安全で調和の取れた市民社会の構築を目指すことを目的として教育研究されている。2007年より神戸大学工学部には市民工学専攻・市民工学科が置かれている。イスラエル工科大学にも市民工学を専攻とする学部が置かれている。
(武上真理子 2013)[1]によると、そもそも「土木」とはもともと幅広く排他性のない概念である。逆に実際よりも狭い意味で捉えられたのが"architecture"の訳語である 「造家術」であったとされる。
(田中亮三, 増田彰久 2006, p. 110)、(藤田龍之 1988, p. 9-12)、(武上真理子 2013, p. 219-222)を参照すると、18-19世紀のヨーロッパでは、土木技術また土木工学教育の分野の最先進国はフランスであった。ちなみに当時のフランスにおける"ingenieur civil"とはエコール・サントラルで学位を取った民間技術者を指し、その仕事の範囲は土木をはじめ機械、冶金、化学など幅広い分野に及んでいた[2]。
ただしここでいう市民社会は、その経済を支え発展させるために、植民地(=市民社会とはみなされない)を擁していた。また、堀勇良によればまちづくり、すなわち市政レベルの公共的事業=public worksを実現する技術が本来のcivil engineeringであるが、近代日本においてはpublic works departmentを政府機関の工部省に対応させ、公共事業を政府の事業とする通念が定着した[3]。
脚注
参考文献
- 武上真理子「シヴィル・エンジニアリングの語と概念の翻訳―「市民の技術」とは何か」『石川禎浩・狹間直樹編『近代東アジアに おける翻訳概念の展開』』京都大学人文科学研究所、2013年、217-251頁、CRID 1010282257085154705、hdl:2433/246491、2023年11月20日閲覧。
- 石川禎浩, 狭間直樹『近代東アジアにおける翻訳概念の展開』京都大学人文科学研究所〈京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター研究報告〉、2013年。hdl:2433/246235。全国書誌番号:22215929。https://hdl.handle.net/2433/246235。
- 田中亮三, 増田彰久『イギリスの近代化遺産』小学館、2006年、110頁。
- 藤田龍之「“Civll Engineering”の語義および日本語訳の歴史的経過について」『日本土木史研究発表会論文集』第8巻、土木学会、1988年、9-12頁、doi:10.11532/journalhs1981.8.9。
外部リンク
- 市民工学専攻・市民工学科 神戸大学大学院工学研究科・工学部