無人宇宙補給機

無人宇宙補給機(むじんうちゅうほきゅうき、英語: Unmanned resupply spacecraft)とは、宇宙ステーションに機材や物資などを補給するために設計された無人宇宙機。「無人」とある通り有人飛行は想定されていないが、宇宙ステーションとドッキングしている間は与圧部に人が出入りできるようになっている。

1978年1月20日に打ち上げられたプログレス1から始まり、過去にはサリュート6号サリュート7号ミール天宮2号の補給に、そして現在は国際宇宙ステーション (ISS) と中国宇宙ステーション (CSS) の補給に使用されている。打ち上げられた機体のほとんどは、旧ソ連ロシア連邦プログレス補給船である。

運用中

運用終了

  • ロシアのTKS : 1981年 - 1991年
  • 欧州欧州補給機 (ATV) : 2008年3月9日 - 2015年2月15日。
    • 欧州宇宙機関 (ESA) ではATVと呼ばれる補給貨物船をISSへの貨物運搬に運用していた。1号機(ジュール・ヴェルヌ)は2008年に打ち上げられた。プログレスの約3倍にあたる最高7.5トンの貨物をISS軌道上に運搬でき、12ヶ月ごとにアリアン5ロケットで打ち上げる計画だった。最終5号機(ジョルジュ・ルメートル)が2015年2月15日に大気圏再突入して運用終了。
  • アメリカのスペースXのドラゴン : 2012年5月22日 - 2020年4月7日。
  • 日本宇宙ステーション補給機 (HTV) : 2009年9月10日 - 2020年8月20日。
    • 日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) ではHTVと呼ぶ補給貨物船をISSへの貨物運搬に運用している。2009年9月10日に1号機がH-IIBロケットで打ち上げられ、2020年5月に最終9号機が打ち上げられ、日本時間の同年8月20日16時7分ごろ大気圏に再突入し[9]、運用を終了した。以降は後継機の新型宇宙ステーション補給機 (HTV-X) に移行する方針である[10]

開発中

開発中止

  • アメリカのロケットプレーン・キスラーによるK-1 : 資金調達に失敗したため、NASAとの契約が終了[14]
  • アンドリュース・カーゴ・モジュール
  • アメリカのARCTUS(英語版) : COTS計画の無人補給船。
  • 日本のHTV-R
  • アメリカのジュピター(英語版) : CRS-2計画で提案された無人補給船。パロームと同じようなコンセプトで、貨物コンテナ「エクソライナー」を軌道上で交換でき、再利用できることが特徴である[15]
  • ロシアのパローム(英語版) : ロシア語でフェリーを意味するパロームという名前の新しい宇宙船が、プログレスの代替としてRKKエネルギア社から提案されていた。この新しい宇宙船は、計画中のクリーペルやロシアのエアロックをもつ他の貨物コンテナを回収し、最大15トンまでISSに運搬できる。しかし、その後もプログレスが使われる計画があることや、パロームの新たな情報が出なくなったことから、中止された可能性も指摘されている[15]

ギャラリー

  • 無人宇宙補給機の比較。左からプログレス、ATV、HTVと発展型(HTV-X)、ドラゴン標準型と拡張型、シグナス標準型と拡張型、天舟。赤が与圧区画、橙が非与圧区画、青が燃料区画
    無人宇宙補給機の比較。左からプログレスATVHTVと発展型(HTV-X)、ドラゴン標準型と拡張型、シグナス標準型と拡張型、天舟。赤が与圧区画、橙が非与圧区画、青が燃料区画
  • ATV初号機ジュール・ヴェルヌ
    ATV初号機ジュール・ヴェルヌ
  • ジュール・ベルヌの内部
    ジュール・ベルヌの内部
  • HTV初号機。HTVはカナダアーム2によってドッキングする
    HTV初号機。HTVはカナダアーム2によってドッキングする
  • HTV初号機の与圧部に入るISSクルー
    HTV初号機の与圧部に入るISSクルー
  • ISSにドッキングしているプログレスM-05M
    ISSにドッキングしているプログレスM-05M
  • プログレスM-53の補給物資。食料、水、燃料、装置が2トン入っている
    プログレスM-53の補給物資。食料、水、燃料、装置が2トン入っている

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 2018年以降はノースロップ・グラマンに買収されている。

出典

  1. ^ Gunter's Space Page: Progress-M 1M - 10M (11F615A60, 7KTGM).
  2. ^ 鳥嶋真也 (2019年3月4日). “スペースX、新型宇宙船「クルー・ドラゴン」を打ち上げ - ISSとドッキング”. マイナビニュース. https://news.mynavi.jp/techplus/article/20190304-782386/ 2019年3月6日閲覧。 
  3. ^ “スペースX社、新型のカーゴドラゴン打ち上げ成功 初の商業エアロックを運ぶ”. sorae (2020年12月8日). 2020年12月9日閲覧。
  4. ^ “中国の貨物宇宙船「天舟」、ペイロードで日本を上回る”. 人民網日本語版 (人民日報社). (2014年9月3日). http://j.people.com.cn/n/2014/0903/c95952-8778177.html 2022年7月7日閲覧。 
  5. ^ “中国、補給船「天舟一号」長征七号で打ち上げ実施”. sorae.jp (2017年4月20日). 2017年4月22日閲覧。
  6. ^ “中国、宇宙空間でドッキング実験 初の無人貨物船”. 山陰中央新報 (2017年4月22日). 2017年4月22日閲覧。
  7. ^ “中国の宇宙貨物船「天舟2号」、コアモジュールとのドッキングに成功”. AFPBB NEWS. (2021年5月30日). https://www.afpbb.com/articles/-/3349124 2021年6月15日閲覧。 
  8. ^ “ついに到着! ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」がISSにドッキング”. sorae (2022年5月21日). 2022年5月22日閲覧。
  9. ^ “「こうのとり」9号機(HTV9)の大気圏への再突入完了を確認しました”. JAXA 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター (2020年8月20日). 2020年8月21日閲覧。
  10. ^ “「こうのとり」最終ミッションの9号機、5月21日打ち上げへ”. sorae.jp. (2020年3月24日). https://sorae.info/space/20200324-htv9.html 2020年3月27日閲覧。 
  11. ^ “有翼宇宙船ドリーム・チェイサー、2021年の打ち上げ目指す”. sorae.jp. (2020年1月28日). https://sorae.info/space/20200127-dreamchaser.html 2020年1月30日閲覧。 
  12. ^ “スペースX、月周回有人拠点「ゲートウェイ」に物資補給を実施へ - NASA”. マイナビニュース (2020年4月2日). 2020年5月18日閲覧。
  13. ^ “Retrievable Progress GVK spacecraft”. Russianspaceweb.com. 2019年1月4日閲覧。
  14. ^ “Report: NASA to cancel RpK COTS award”. spacetoday.net. 2010年3月19日閲覧。
  15. ^ a b “ロッキード・マーティン社の宇宙タグボート「ジュピター」 (2) ジュピターが挑むCRS-2と、宇宙タグボートが持つ可能性”. マイナビニュース (2015年4月9日). 2015年4月9日閲覧。

関連項目

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