開端 (クルアーン)

開端
سورة الفاتحة
Al-Fatiha
アル・ファーティハ
開端
啓示 マッカ啓示
章題の意味 クルアーンの冒頭の序説[1]
詳細
スーラ 第1章
アーヤ 全7節
ジュズウ 1番
語数 29語
文字数 139文字
次スーラ 雌牛
سورة الفاتحة
سورة الفاتحة
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開端(アル=ファーティハ、Al-Fatiha)はクルアーンの最初のスーラで、マッカ時代最初期の啓示の一つである。アッラーの導きと支配、慈悲を称える7つのアーヤから構成される。このスーラは毎日の祈りサラートの最初の部分に使われる。ムスリムは1日に最低17回は開端を暗唱する。

開端章は、ファーティハ・アルキターブ(Fatiha al-Kitāb)とも呼ばれる(ファーティハは動詞「開く」の派生語)[2]

解釈

ムスリムは、クルアーンはアッラーからアラビア語で与えられた啓示であると信じている。他の言語への翻訳は単に表面的な訳に過ぎず、真のクルアーンではないと考えている。

原語のアラビア語とその翻訳は以下のようになる。

1:1 بِسْمِ ٱللَّهِ ٱلرَّحْمَٰنِ ٱلرَّحِيمِ ۝

Bismillāhi r-raḥmāni r-raḥīm
神の御名の下に最高の慈悲を。

1:2 ٱلْحَمْدُ لِلَّهِ رَبِّ ٱلْعَٰلَمِينَۙ ۝

Al ḥamdu lillāhi rabbi l-'ālamīn
全ての感謝は世界の神アッラーただ一人へ。

1:3 ٱلرَّحْمَٰنِ ٱلرَّحِيمِۙ ۝

Ar-raḥmāni r-raḥīm
アッラーは最高の慈悲を持ち、

1:4 مَٰلِكِ يَوْمِ ٱلدِّينِۗ ۝

Māliki yawmi d-dīn
最後の審判の日の支配者である。

1:5 إِيَّاكَ نَعْبُدُ وَإِيَّاكَ نَسْتَعِينُۗ ۝

Iyyāka na'budu wa iyyāka nasta'īn
我々はあなたのみを崇拝し、あなたのみに助けを求める。

1:6 ٱهْدِنَا ٱلصِّرَٰطَ ٱلْمُسْتَقِيمَۙ ۝

Ihdinā ṣ-ṣirāṭa l-mustaqīm
我々全てを正しい道に導きたまえ。

1:7 صِرَاطَ الَّذِينَ أَنْعَمْتَ عَلَيْهِمْ غَيْرِ الْمَغْضُوبِ عَلَيْهِمْ وَلَا الضَّالِّينَ ۝

Ṣirāṭa l-ladīna an'amta 'alayhim ġayri l-maġḍūbi 'alayhim walā ḍḍāllīn
あなたの怒りを与えられた者や自分の道を見失った者ではなく、あなたの恩寵を授けられた者の道に。

備考

"bismillāhir rahmānir rahīm"という最初の節(この節のことを「タスミ(tasmiyya)」と呼ぶことがある[2])は、ムスリム社会の至る所で見られるため、非アラビアの人にも馴染みがあるかもしれない。この節は、第9章を除くクルアーンの全ての章の冒頭に登場する。日常の祈りの際、全ての章の前に暗唱される他、神の祝福を得る手段として日常の様々な行動の前にも暗唱される。なお、この文はUnicodeにおいて、定型文の合字として登録されている:U+FDFD ﷽ 。

"ar rahmān"と"ar rahīm"という2語の言葉は、しばしば「慈悲深い」等と翻訳される。最上級で「最も慈悲深い」等と訳されることもある。前者は程度を表し、後者は時間を表す。

第2節のالحمد الله"(アルハムドゥリッラー)は、アラビア語で最も有名なフレーズの1つであり、個人の意志や幸福、不幸への慰めを意味する。この節には、神の2つの名前"الله"と"رب"の関係が出てくる点でも重要である。前者は神の遍在的な名前であり、後者はおおよそ英語のLordに相当するものである。どちらもヘブライ語の"rabbi"に由来する。この2語を全て赤字で印刷しているクルアーンもある。

第4節の最初の単語は、クルアーンの版によって異なっている。最もポピュラーなのは、「王」を意味する短いaの"maliki"か、「主人」を意味する長いaの"māliki"である。"maliki"も"māliki"も、どちらも同じセム語根に由来している。

第7節で、「あなたの怒りを与えられた者」という表現はユダヤ教、「自分の道を見失った者」という表現はキリスト教に取り入れられている。

統計

このスーラには、7つの節、29語、139文字が含まれているが(第1節を除くと25語120文字)、Ibn Kathirは「開端は25語113文字からなっていると言われている」と語っている。これは、文字の数え方の違いによるものである。また、クルアーンは元々書かれたものではなく口承のものなので、英語と米語のような若干のスペルの違いがある。

重要性

ハディースの中に「祈りの中に開端のスーラを入れない場合、その祈りは無効である」と書かれているため、多くのイスラム学者がこの節の重要性を強調している。実際には、伝統に則ったサラートを行うムスリムは最低でも1日17回は開端のスーラを唱えることになる。

13章(雷電)39節などにある「ウンム・アル=キターブ(umm al-kitāb)」という語は、字義通りに受け取ると、「書物の母」を意味するというが、この­第1章(開端)自体全体を指しているという指摘もある[3]

脚注

  1. ^ 日本ムスリム情報事務所 聖クルアーン 開端 (アル・ファーティハ)
  2. ^ a b 吉村作治『コーランの奇蹟』p.98 (1983年1月、経済界 タツの本、ISBN 4766700716)
  3. ^ 岩波イスラーム辞典「ウンム・アル=キターブ」

外部リンク

アラビア語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
開端(アラビア語)
英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
開端(英語)
  • Al-Fatiha at Quran.com
  • 日本ムスリム情報事務所 聖クルアーン 開端 (アル・ファーティハ)
  • 大川周明訳:古蘭(クルアーン)1950(昭和25)年2月(65歳) 岩崎書店 全集第7巻 (大川周明ネット)
スーラ 全114章
ジュズウ (章)

章題

1〜13 01-)
  • 開端
  • 雌牛*
  • イムラーン家*
  • 婦人
  • 食卓
  • 家畜
  • 高壁۩*
  • 戦利品
  • 悔悟
  • ユーヌス*
  • フード*
  • ユースフ*
  • 雷電۩*
  • イブラーヒーム*
14 (15-)
  • アル・ヒジュル*
  • 蜜蜂۩
15〜16 (17-)
  • 夜の旅۩
  • 洞窟
  • マルヤム۩*
  • ター・ハー*
17 (21-)
  • 預言者
  • 巡礼۩
18〜25 (23-)
  • 信者たち
  • 御光
  • 識別۩
  • 詩人たち*
  • 蟻۩*
  • 物語*
  • 蜘蛛*
  • ビザンチン*
  • ルクマーン*
  • アッ・サジダ۩*
  • 部族連合
  • サバア
  • 創造者
  • ヤー・スィーン*
  • 整列者
  • サード۩*
  • 集団
  • ガーフィル*
  • フッスィラ۩*
  • 相談*
  • 金の装飾*
  • 煙霧*
  • 跪く時*
26〜27 (46-)
  • 砂丘*
  • ムハンマド
  • 勝利
  • 部屋
  • カーフ*
  • 撒き散らすもの
  • 星۩
  • 慈悲あまねく御方
  • 出来事
28 (58-)
  • 抗弁する女
  • 集合
  • 試問される女
  • 戦列
  • 合同礼拝
  • 偽信者たち
  • 騙し合い
  • 離婚
  • 禁止
29 (67-)
  • 大権
  • 筆*
  • 真実
  • 階段
  • ヌーフ
  • 幽精
  • 衣を纏う者
  • 包る者
  • 復活
  • 人間
  • 送られるもの
30 (78-)
  • 消息
  • 引き離すもの
  • 眉をひそめて
  • 包み隠す
  • 裂ける
  • 量を減らす者
  • 割れる۩
  • 星座
  • 夜訪れるもの
  • 至高者
  • 圧倒的事態
  • 太陽
  • 胸を広げる
  • 無花果
  • 凝血۩
  • みいつ
  • 明証
  • 地震
  • 進撃する馬
  • 恐れ戦く
  • 蓄積
  • 時間
  • 中傷者
  • クライシュ族
  • 慈善
  • 潤沢
  • 不信者たち
  • 援助
  • 棕櫚
  • 純正
  • 黎明
  • 人々
関連項目
太字۩の計14章=サジダ節あり (22「巡礼」のみ2節で計15)。 *の計29章=章の冒頭に神秘文字あり。
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