EF英語能力指数

EF英語能力指数(EF EPI)は、EF試験を受験した成人の英語力の平均の国ごとのランキングを示そうとする試みである。指数は代表抽出調査ではなく、自主的に受験した者の調査結果に基づいている。エコノミスト誌が述べるには、「これは統計的に制御された研究ではなく、調査対象者は無料の試験をオンラインで自発的に受ける。その性質上、調査対象者はインターネットに接続しており、英語力の試験に興味があり、人口全体と比べると若年層、都市部の者が多い。」

この指数は、国際教育会社のEF Education Firstの製品であり、インターネットにより無料で提供される英語の試験によって集められた統計から結論を得ている。2012年、170万人の受験者により初めてオンライン調査結果が公表され、直近の第6版は2016年11月に公表された。

方法

EF EPIの第6版は、2015年の95万人の受験者のデータから算出された。受験者は自主的に受けるもので、その属性については集計されない。この試験はEF社により広報などのために用いられている。第6版では69か国と3地域が出ている。ランキングに含まれるためには、国あたり最低400人の受験者が必要とされる。

結果

報告書は国ごとのランキング表、英語能力と相関するその他の社会経済的な要因に関して図表を用いた分析の数ページ、そしてそれぞれの地域の分析から成っている。2016年の報告と、それに付随する国ごとの状況報告は、性別、年齢別、国内の地域別、また都市別の英語能力の段階を含んでいる。EF社のウェブサイトにはレポートの一部が掲載され、多くの国や地域における英語能力の分析がなされている。

主な結論

  • 人口当たりの輸出国民総所得、イノベーションは、すべて英語能力と正の相関を示す。
  • 英語能力の段階は国によって異なる変化の傾向を示しており、英語能力が落ちている国もある。
  • ヨーロッパが全体として最も英語能力が高く、中東が最も低い。
  • 女性は男性よりも英語能力が高い。

2019年の順位

以下は、2018年のデータに基づき2019年に公表された最新の国別の順位、スコア、英語能力である[1]

2019年の順位 国名 2019年のスコア 2019年の英語能力レベル
1 オランダの旗 オランダ 70.27 とても高い英語能力
2 スウェーデンの旗 スウェーデン 68.74 とても高い英語能力
3 ノルウェーの旗 ノルウェー 67.93 とても高い英語能力
4 デンマークの旗 デンマーク 67.87 とても高い英語能力
5 シンガポールの旗 シンガポール 66.82 とても高い英語能力
6 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 65.38 とても高い英語能力
7 フィンランドの旗 フィンランド 65.34 とても高い英語能力
8 オーストリアの旗 オーストリア 64.11 とても高い英語能力
9 ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク 64.03 とても高い英語能力
10 ドイツの旗 ドイツ 63.77 とても高い英語能力
11 ポーランドの旗 ポーランド 63.76 とても高い英語能力
12 ポルトガルの旗 ポルトガル 63.14 とても高い英語能力
13 ベルギーの旗 ベルギー 63.09 とても高い英語能力
14 クロアチアの旗 クロアチア 63.07 とても高い英語能力
15 ハンガリーの旗 ハンガリー 61.86 高い英語能力
16 ルーマニアの旗 ルーマニア 61.36 高い英語能力
17 セルビアの旗 セルビア 61.30 高い英語能力
18 ケニアの旗 ケニア 60.51 高い英語能力
19 スイスの旗 スイス 60.23 高い英語能力
20 フィリピンの旗 フィリピン 60.14 高い英語能力
21 リトアニアの旗 リトアニア 60.11 高い英語能力
22 ギリシャの旗 ギリシャ 59.87 高い英語能力
23 チェコの旗 チェコ 59.30 高い英語能力
24 ブルガリアの旗 ブルガリア 58.97 高い英語能力
25 スロバキアの旗 スロバキア 58.82 高い英語能力
26 マレーシアの旗 マレーシア 58.55 高い英語能力
27 アルゼンチンの旗 アルゼンチン 58.38 高い英語能力
28 エストニアの旗 エストニア 58.29 高い英語能力
29 ナイジェリアの旗 ナイジェリア 58.26 高い英語能力
30 コスタリカの旗 コスタリカ 57.38 中程度の英語能力
31 フランスの旗 フランス 57.25 中程度の英語能力
32 ラトビアの旗 ラトビア 56.85 中程度の英語能力
33 香港の旗 香港 55.63 中程度の英語能力
34 インドの旗 インド 55.49 中程度の英語能力
35 スペインの旗 スペイン 55.46 中程度の英語能力
36 イタリアの旗 イタリア 55.31 中程度の英語能力
37 大韓民国の旗 韓国 55.04 中程度の英語能力
38 中華民国の旗 台湾 54.18 中程度の英語能力
39 ウルグアイの旗 ウルグアイ 54.08 中程度の英語能力
40 中華人民共和国の旗 中国 53.44 中程度の英語能力
41 マカオの旗 マカオ 53.34 中程度の英語能力
42 チリの旗 チリ 52.89 中程度の英語能力
43 キューバの旗 キューバ 52.70 中程度の英語能力
44 ドミニカ共和国の旗 ドミニカ共和国 52.58 中程度の英語能力
45 パラグアイの旗 パラグアイ 52.51 中程度の英語能力
46 グアテマラの旗 グアテマラ 52.50 中程度の英語能力
47 ベラルーシの旗 ベラルーシ 52.39 低い英語能力
48 ロシアの旗 ロシア 52.14 低い英語能力
49 ウクライナの旗 ウクライナ 52.13 低い英語能力
50 アルバニアの旗 アルバニア 51.99 低い英語能力
51 ボリビアの旗 ボリビア 51.64 低い英語能力
52 ベトナムの旗 ベトナム 51.57 低い英語能力
53 日本の旗 日本 51.51 低い英語能力
54 パキスタンの旗 パキスタン 51.41 低い英語能力
55 バーレーンの旗 バーレーン 50.92 低い英語能力
56 ジョージア (国)の旗 ジョージア 50.62 低い英語能力
57 ホンジュラスの旗 ホンジュラス 50.53 低い英語能力
58 ペルーの旗 ペルー 50.22 低い英語能力
59 ブラジルの旗 ブラジル 50.10 低い英語能力
60 エルサルバドルの旗 エルサルバドル 50.09 低い英語能力
61 インドネシアの旗 インドネシア 50.06 低い英語能力
62 ニカラグアの旗 ニカラグア 49.89 低い英語能力
63 エチオピアの旗 エチオピア 49.64 低い英語能力
64 パナマの旗 パナマ 49.60 低い英語能力
65 チュニジアの旗 チュニジア 49.04 低い英語能力
66 ネパールの旗 ネパール 49.00 低い英語能力
67 メキシコの旗 メキシコ 48.99 低い英語能力
68 コロンビアの旗 コロンビア 48.75 低い英語能力
69 イランの旗 イラン 48.69 低い英語能力
70 アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 48.19 とても低い英語能力
71 バングラデシュの旗 バングラデシュ 48.11 とても低い英語能力
72 モルディブの旗 モルディブ 48.02 とても低い英語能力
73 ベネズエラの旗 ベネズエラ 47.81 とても低い英語能力
74 タイ王国の旗 タイ 47.61 とても低い英語能力
75 ヨルダンの旗 ヨルダン 47.21 とても低い英語能力
76 モロッコの旗 モロッコ 47.19 とても低い英語能力
77 エジプトの旗 エジプト 47.11 とても低い英語能力
78 スリランカの旗 スリランカ 47.10 とても低い英語能力
79 トルコの旗 トルコ 46.81 とても低い英語能力
80 カタールの旗 カタール 46.79 とても低い英語能力
81 エクアドルの旗 エクアドル 46.57 とても低い英語能力
82 シリアの旗 シリア 46.36 とても低い英語能力
83 カメルーンの旗 カメルーン 46.28 とても低い英語能力
84 クウェートの旗 クウェート 46.22 とても低い英語能力
85 アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 46.13 とても低い英語能力
86 ミャンマーの旗 ミャンマー 46.00 とても低い英語能力
87 スーダンの旗 スーダン 45.94 とても低い英語能力
88 モンゴル国の旗 モンゴル 45.56 とても低い英語能力
89 アフガニスタンの旗 アフガニスタン 45.36 とても低い英語能力
90 アルジェリアの旗 アルジェリア 45.28 とても低い英語能力
91 アンゴラの旗 アンゴラ 44.54 とても低い英語能力
92 オマーンの旗 オマーン 44.39 とても低い英語能力
93 カザフスタンの旗 カザフスタン 43.83 とても低い英語能力
94 カンボジアの旗 カンボジア 43.78 とても低い英語能力
95 ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン 43.18 とても低い英語能力
96 コートジボワールの旗 コートジボワール 42.41 とても低い英語能力
97 イラクの旗 イラク 42.39 とても低い英語能力
98 サウジアラビアの旗 サウジアラビア 41.60 とても低い英語能力
99 キルギスの旗 キルギス 41.51 とても低い英語能力
100 リビアの旗 リビア 40.87 とても低い英語能力

批判

EF EPIは、各国の代表抽出を行っていないことから批判されてきた。言語社会学者の寺沢拓敬は、重大な問題点として3点上げている[2]

  • 代表性はない。EF社独自のオンライン英語力診断テストを受けた人の結果に過ぎない。(英語がよくできる人は「診断」テストを受けるはずがないし、まったくできない人・興味がない人も診断しようとは思わないわけで受けない)
  • 数値が乱高下している。点数が毎年大きくブレており、この点からも信頼性の乏しさは一目瞭然である。(たとえば、EF英語能力指数によると、日本は2015年までは香港よりも英語ができる国だった。)
  • 営利目的。このランキングは、EF社がプロモーションの一環としてやっているものであり、調査のために作られたものではない。


上記のように、このランキングは、国際比較調査ではなくテストスコアを集計したものを二次利用したものに過ぎない。ただし、英語能力の国際比較調査はほとんど存在しないこともあり、本ランキングを参照してしまう著者・記者もいる。

類似の調査

欧州委員会は「SurveyLang」と呼ばれる言語調査を行った。この調査では、15歳のヨーロッパの学生から代表サンプルを取って、外国語スキルを調ベるテストを行っている。13カ国の調査報告とデータセットは2012年6月に公開された[3]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ “EF EPI 2019 - EF English Proficiency Index” (2019年). 2020年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月14日閲覧。
  2. ^ “「日本の英語力は53位」というデマ報道が流れ出す季節になりましたね。(寺沢拓敬) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2021年12月19日閲覧。
  3. ^ SurveyLang project. European Commission. Retrieved on 2012-09-20.

関連項目

  • 第二言語または外国語としての英語(英語版)

外部リンク

  • 公式サイト