マフノフシチナ

マフノフシチナ
Махновщина
ウクライナ国 1918年 - 1921年 ウクライナ・ソビエト社会主義共和国
マフノフシチナの国旗
(国旗)
マフノフシチナの位置
公用語 ウクライナ語
ロシア語
首都 フリャイポーレ(ウクライナ語版)
元首等
xxxx年 - xxxx年 なし[1]
人口
約700万人
変遷
成立 1918年
赤軍の侵攻により消滅1921年
アナキズム
潮流
社会的無政府主義
集産主義的無政府主義
アナルコサンディカリスム
無政府共産主義
左派アナキズム
ポスト左翼無政府主義

個人主義的無政府主義
無政府資本主義
リバタリアン社会主義
自由市場アナキズム
エゴイスト無政府主義
平和主義アナキズム
パナーキズム
無政府フェミニズム
グリーンアナキズム
民族アナキズム

宗教的アナキズム
キリスト教アナキズム
仏教アナキズム
アナキズムとイスラーム

en:Agorism
Crypto
Heathianアナキズム
en:Infoanarchism
Insurrectionary
ミューチュアリズム
ニヒリスト運動
哲学的アナキズム
Platformist
ポストコロニアル・アナキズム
Primitivist
Vegan
形容詞の無いアナキズム
Zen
ポストアナキズム
理論と実践
無政府状態
ブラック・ブロック
階級闘争
コミューン
en:Consensus democracy
地方分権
ディープエコロジー
直接行動
直接民主主義
en:Dual power
en:Especifismo
en:Expropriative anarchism
en:Horizontalidad
en:Illegalism
個人主義
en:Individual reclamation
en:Isocracy
アナキスト法
en:Participatory politics
en:Permanent Autonomous Zone
en:Polycentric law
en:Prefigurative politics
en:Private defense agency
行為によるプロパガンダ
労働拒否権
Rewilding
en:Social ecology
en:Social insertion
en:Spontaneous order
人物
ゴドウィン
en:Josiah Warren
シュティルナー
en:Johann Most
プルードン
バクーニン
ソロー
トルストイ
クロポトキン
アーレント
en:Benjamin Tucker
en:Errico Malatesta
ゴールドマン
マフノ
バークマン
en:Buenaventura Durruti
en:Émile Armand
ロスバード
en:Murray Bookchin
en:John Zerzan
幸徳秋水
大杉栄
汪兆銘
課題
アナキズムと動物の権利
アナキズムと資本主義
アナキズム批判
アナキズムとイスラーム
アナキズムとLGBTの権利
ライフスタイル・アナキズム
アナキズムとマルクス主義
アナキズムとナショナリズム
アナキズムと正統派ユダヤ教
アナキズムと宗教
アナキズムと性
アナキズムと暴力
歴史
1999 WTO Conference protest
en:1919 United States anarchist bombings
甘粕事件
en:Anarchist Catalonia
en:Anarchist Exclusion Act
en:Anarchy in Somalia
Australian Anarchist Centenary
en:Barcelona May Days
en:Biennio rosso
en:Carnival Against Capitalism
en:Escuela Moderna
Hague Congress
ヘイマーケット事件
幸徳事件
Congress of Amsterdam
en:Kate Sharpley Library
クロンシュタットの反乱
en:Labadie Collection
en:Manifesto of the Sixteen
五月危機
メーデー
パリ・コミューン
Provo
en:Red inverted triangle
en:Spanish Revolution
Third Russian Revolution
悲劇の一週間
en:Trial of the thirty
自由地区(マフノフシチナ)
日本アナキスト連盟
文化
en:Anarchist Bookfair
アナルコ=パンク
芸術
en:Black anarchism
カルチャー・ジャミング
DIY
フリーガン
en:Independent Media Center
en:Infoshop
インターナショナル
en:Jewish anarchism
Land and liberty
Lifestylism
普通教育
en:Property is theft!
en:Radical cheerleading
en:Radical environmentalism
スコッター
アナキズムのシンボル
アナキズムと性
Terminology
バリケードへ
経済
en:Agorism
生活協同組合
en:Counter-economics
自由市場
フリースクール
Free store
en:Geolibertarianism
en:Gift economy
en:Market abolitionism
相互扶助
ミューチュアリズム
参与型経済
計画経済
en:Really Really Free Market
en:Self-ownership
サンディカリスム
賃金奴隷
自主管理
地域
アフリカ
オーストラリア
オーストリア=ハンガリー
ブラジル
カナダ
中国
キューバ
エクアドル
イングランド
フランス
ギリシャ
インド
アイスランド
アイルランド
イスラエル
イタリア
日本
朝鮮半島
メキシコ
ポーランド
ロシア
スペイン
スウェーデン
トルコ
ウクライナ
アメリカ合衆国
ベトナム
一覧
アナルコ=パンクのバンド
書籍
コミュニティ
架空の人物
ユダヤ人アナキスト
音楽家
組織
雑誌
詩人
ロシアのアナキスト
関連

マフノフシチナウクライナ語: Махновщина, ウクライナ語ラテン翻字: makhnovshchyna)とは、革命(ウクライナ語版)後のウクライナにおいて1918年から1921年までの間存在した、アナキズムに基づく[2]自由主義的なコミューン[1]の名称である。運動指導者のネストル・マフノにちなんで命名された。ウクライナ革命蜂起軍(黒軍)とソビエトの保護の下で運営され、その領域にはおよそ700万人が暮らした[3]

一時期はアントーン・デニーキン白軍に占領され南ロシア政府に支配されたが、黒軍と赤軍が連携したゲリラ戦によって1920年に白軍は駆逐された。

アナキストによって建設されたという性質上、このコミューンを「国家」や「政府」と見なすことについては異論がある。例えばマフノはこの「政府の指導者」と紹介されることがあるが、マフノ主義者によれば彼は純粋に軍事的な役割しか果たしていなかったという[4]

歴史

建設

1918年、「ナバト(英語版)」("Набат"、警鐘の意)の名で知られる最初のアナキストの会議において決定されたのは次の5つの指針であった[5]

  1. すべての政党の停止
  2. すべての独裁の排除
  3. すべての国家の否定
  4. すべての「過渡期」や「プロレタリア独裁」の否定
  5. 評議会(ソビエト)によるすべての労働者の自己管理

これらの目標は明らかにボリシェヴィキのそれとは対立するものだった。さらにアナキストたちは自身のシンボル・カラーとして伝統的なを採用し、白い帝政主義者にも赤いボリシェヴィキにも反対を表明した。統治の原則は黒軍の文化教育部門によって発行された宣言文に示され、それには広く民衆が、とりわけ農民や労働者が関心を持った[5]

発展と特徴

1918年11月から翌年6月にかけ、マフノ主義者はウクライナの農民と労働者によって運営されるアナキズム社会の確立を成し遂げた。彼らの支配領域はベルジャーンシクドネツィク、アレクサンドロフスク(現在のザポリージャ)、エカチェリノスラフ(現在のドニプロペトロウシク)まで広がった。

マフノは1936年の著書『ウクライナのロシア革命』(«Русская революция на Украине»)で次のように述べている。

「村々の農業の大半は、労働者のことを理解した農民によってなされていた。コミューンは第一に平等と連帯に基いて組織され、メンバーの誰もが、男女問わず、完全な良心に基いて共に家事に勤しんでいた。(中略)作業計画は全員が出席する会議で決められ、彼らは自分たちがなすべきことを正確に知っていた」

黒軍の指導者たちによれば、マフノ主義者が自由社会正義の到達点であるとして掲げた目標に則って、社会は再編されたという。教育はスペインの自由主義的教育者であるフランシスコ・フェレル(スペイン語版)の原則を踏襲し、経済は作物や畜産物を農村と都市の間で自由に交易するというピョートル・クロポトキンの理論に基づいていた。

マフノ主義者は「自由労働者と農民のソビエト」[6]への支持を表明し、ウクライナの中央政府を批判した。その一方でマフノはボリシェヴィキを独裁者と呼び、「チェーカー(中略)やそれと同様の強制的で権威主義的な懲戒機関」にも反対し、さらに「言論、出版、集会結社その他の自由」[6]を求めた。マフノ主義革命と秘密警察の連携は宣言によって禁じられ、それに類するすべての民兵組織や警察組織はマフノフシチナの領内では非合法化された[7][8]。歴史家のヘザー=ノエル・シュワルツ(Heather-Noël Schwartz)は「マフノは政治的な権威のための組織を容認しなかっただろうし、そのためにはボリシェヴィキの革命委員会を解体することもいとわなかっただろう」と述べている[9][10]

しかし、ボリシェヴィキの側はマフノが2種類の秘密警察を持っていると非難していた[11]。1919年6月4日のトロツキーの1824番指令によって、マフノは議会から排除され、その信用は毀損された。その指令では「黒軍は白軍を前にして退却を繰り返した。それは指導部の無能、犯罪的傾向、裏切り行為に起因している」とされた[5]

崩壊

ペトログラードのボリシェヴィキ政権は当初はマフノと同盟し、その自由主義の実験場として独立した地域の存在を認めていた[9]。しかしマフノフシチナですべての政党が禁止されるに至って、ボリシェヴィキはマフノ主義を脅威と見なすようになり[12]、マフノフシチナは軍閥政権であると断定するプロパガンダを再開した。ボリシェヴィキの新聞は、マフノフシチナの指導者は民主的にではなくマフノの軍閥によって選出されたと宣伝した。さらに、マフノ派はソビエトの鉄道員と電報官への食糧の提供を拒否し、その体制の「特殊部門」によって密かに処刑と拷問を行い、赤軍の物資輸送部隊を襲撃し、ロシアの都市部で致死的なテロを行った、などと無根拠に[13]非難した[14]

最終的にボリシェヴィキはマフノフシチナとの提携関係を破棄し、黒軍へ奇襲攻撃を行った[15]

脚注

  1. ^ a b Skirda, Alexandre, Nestor Makhno: Anarchy's Cossack. AK Press, 2004, p. 86
  2. ^ Noel-Schwartz, Heather.The Makhnovists & The Russian Revolution - Organization, Peasantry and Anarchism. Archived on Internet Archive. Accessed October 2010.
  3. ^ Peter Marshall, Demanding the Impossible, PM Press (2010), p. 473.
  4. ^ Skirda, Alexandre, Nestor Makhno: Anarchy's Cossack. AK Press, 2004, p. 34
  5. ^ a b c Daniel Cohn-Bendit and Gabriel Cohn-Bendit, The Makhno Movement and Opposition Within the Party
  6. ^ a b Declaration Of The Revolutionary Insurgent Army Of The Ukraine (Makhnovist). Peter Arshinov, History of the Makhnovist Movement (1918-1921), 1923. Black & Red, 1974
  7. ^ Nestor Makhno--anarchy's Cossack
  8. ^ Declaration Of The Revolutionary Insurgent Army Of The Ukraine (Makhnovist). Peter Arshinov, History of the Makhnovist Movement (1918-1921), 1923. Black & Red, 1974
  9. ^ a b Avrich, Paul. Anarchist Portraits, 1988 Princeton University Press, p. 114, 121
  10. ^ Schwartz, Heather-Noël (January 7, 1920), The Makhnovists & The Russian Revolution: Organization, Peasantry, and Anarchism, オリジナルの2 Dec 98時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20080118074241/http://members.aol.com/ThryWoman/MRR.html 2008年1月18日閲覧。 
  11. ^ Footman, David. Civil War In Russia Frederick A.Praeger 1961, page 287
  12. ^ Skirda, Alexandre, Nestor Makhno: Anarchy's Cossack. AK Press, 2004, p. 236
  13. ^ Nestor Makhno FAQ at The Nestor Makhno Archive. Accessed October 2010.
  14. ^ 'The Makhno Myth', International Socialist Review #53, May–June 2007.
  15. ^ Skirda, Alexandre, Nestor Makhno: Anarchy's Cossack. AK Press, 2004, p. 237-238

関連文献

  • Peter Arshinov, History of the Makhnovist Movement (1918-1921), 1923. (下2冊は日本語訳)
    • ピョートル・アルシーノフ 『マフノ叛乱軍史 ロシア革命と農民戦争』 奥野路介訳、鹿砦社、1973年。
    • ピョートル・アルシノフ 『マフノ運動史 1918-1921 ウクライナの反乱・革命の死と希望』 郡山堂前訳、社会評論社、2007年。 ISBN 978-4784513031

関連項目

ウクライナの歴史
原始・古代
(紀元前300年以前)
中世前期
(300年 - 1240年)
中世後期
(1240年 - 1569年)
近世
(1569年 - 1775年)
近代
(1775年 - 1917年)
現代
(1917年 - 1991年)
現在
(1991年以降)
カテゴリ カテゴリ
ロシア革命後に誕生した国家組織(1917年 - 1922年)
ヨーロッパロシア
ボリシェヴィキ
非ボリシェヴィキ系
北部
沿バルト海
白ロシア
ポーランド
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
ウクライナ
ベッサラビア
クリミア
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
ドン
クバーニ
北カフカース
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
ポヴォールジエ
ヴォルガ川流域)
ウラル
シベリア
極東
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
ザカフカージエ
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
中央アジア
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
  • アラシュ自治国
  • ザカスピ臨時政府(ロシア語版)
  • 自治コーカンド(ロシア語版)
  • 臨時フェルガナ政府(ロシア語版)
ロシア帝国領外
ボリシェヴィキ系
非ボリシェヴィキ系
国号がない場合は統治機関の名称を示す。